NOVA racing 佐々木彰氏


2009年頃。サスペンションのセッティングに悩む事すら出来ない時期にNOVA racingのサスペンションのついたCRF450Rに乗せてもらう機会がありました。とても衝撃を受けたのを覚えています。僕の知ってるCRF450Rではなかったので。自宅に戻ってからもその時のフィーリングが強烈に印象に残っていて、どうやってあのフィーリングのバイクを作れるのかが知りたくてNOVA racingの佐々木さんに電話をかけました。ダートクールでコラムの連載をしていた時だったので僕の事を知って頂いてて、来てもいいよということですぐに渡米しました。佐々木さんにお世話になりながらモトクロスというスポーツのこと、サスペンションについて、フレームについて、エンジンについての話を沢山聞かせていただきました。ほとんどのことは理解出来ずに頷いているだけでしたが…。

その時の話の中でカートリッジフォークを初めて設計したのは自分(佐々木さん)だと仰ってました。設計したサスペンションの写真も見せて頂きました。しかしご本人の証言以外に確かめる事は出来ず、僕は本当かなぁと思って聞いていました。(佐々木さん、ごめんなさい)

帰国後、試行錯誤をしてようやく佐々木さんのバイクのようなフィーリングに近づいたかなと思った時に感じました。

本当に佐々木さんはカートリッジフォークを創ったんだと。

なぜそう思ったのかと言えば、ライダーは気持ち良くライディングをし、その結果、速くてリザルトが良いと嬉しいわけです。その為には扱いやすくて速いバイクが必要であり、それらを構成しているエンジンやサスペンションなどのパーツがライディングがしやすいように速いように纏まっている必要があります。サスペンションを例にすると、サスペンションフィーリングを変更するのは大雑把に言えば減衰力、スプリングレート、剛性、ストローク量、フリクションなどです。どこを変化させてもフィーリングは変わります。しかし先に目的が無ければ、それら一つ一つの変更は意味を成さない訳です。目的を持つからこそ、手段が思い付くということ。なかなか理解しにくい考え方かもしれません。

目的はイメージしにくく、リアリティが低い。

手段はイメージしやすく、リアリティが高い。

人間はリアリティが高いものが意識に上がりやすい。なので手段に意識がいってしまって、気がつくと手段を目的にしてしまっている。こういう事はよく起こります。

目的が先、手段は後。重要な事だと思います。

佐々木さんはライダーがどうやったら速く走れるかという目的がイメージできるからこそ、必要なバイクの性能イメージを持つ事ができ、その性能を出せるカートリッジフォークを創ったんだろうと感じました。現代のバイクにおいても佐々木さんからアドバイスを頂いたこと(サスペンションだけでは無くそれ以外も)を実践すると現代のトップライダーが走り易いと驚くことがあることも事実です。

モトクロスバイクの特性とカートリッジフォークの特性を熟知していないと知り得ない情報。

人から聞いた二次情報では無く、自らが知り得た一次情報。

それは創った人でないと分からないんじゃないのかなと感じています。この話は証拠にはなりませんが、僕はカートリッジフォークを創ったのは佐々木さんだと信じています。